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「第5回日本耐震グランプリ」受賞者応募内容


 入賞されたみなさま、おめでとうございます。日頃の素晴らしい活動に心から敬意を表します。

  今年は、東日本大震災でその実績が高く評価されたものがあり、「復興功績賞」という新たな賞を創設いたしました。

  惜しくも選に漏れましたみなさまには、大変申し訳なく思います。決してその活動レベルが低いということではなく、十分に立派な活動をされてはいるものの僅差で賞を逃したというのが正直な感想です。

  大地動乱の時代、耐震の活動はその緊急性、重要性を一層高めています。日本耐震グランプリは、耐震に取り組まれるみなさまを今後も継続して支援いたします。ぜひ、さらに成果をあげられ再度挑戦されますことを心から期待いたします。

選考委員長 明治大学大学院特任教授 中林 一樹


グランプリ


SRF工法<包帯補強>
(構造品質保証研究所 株式会社)

【取り組み内容】

 SRF工法は、ポリエステル繊維を織製した補強材で、柱を巻きたてたり、梁・壁や接合部に貼り付ける補強法です。コンクリートや木材の亀裂や接合部に弾性的な復元力を付与し、適度に拘束することで、従来の「固める」補強法では実現できなかった大きな靱性を発揮させます。2002年から2007年に掛けてRCの柱及び壁で、2009年から2010年に掛けて木造の基礎、壁、及び接合部について日本建築防災協会の技術評価を、2008年には、土木研究センターの建設技術審査証明を所得しました。

 3月11日の東日本大震災で震度5以上の地域には、施工実績が、事務所ビル143件、マンション77件、学校75件、庁舎等34件をはじめとして460件以上ありましたが、関係者にアンケートを送付し、仙台周辺等の現地訪問調査を実施しましたが、問題があったとの報告はなく、「以前の地震より揺れが少なかった」「壁にほとんどひびも入らなかった」「最小被害で使用継続できて良かった」などの感謝のお言葉を多数いただきました。2011年7月には7,000本の柱補強を達成しました。補強工事件数も800件を超えています。震災の応急復旧や補修にも活用されています。

施工実績

目標性能別件数
用途別件数

 
施工事例

日本橋の事務所ビルはSRF工法で主要な柱と壁を補強し、Is値の基準値クリアと軸耐力確保の補強を行いました。東京駅から新大阪駅まで、駅部周辺の高架橋脚1200 本余りを補強しました。
中央官庁庁舎の主要な柱を補強し、軸耐力を確保する補強を行いました。免震案の約40分の1の費用でした。樹齢2000年近い欅の梁を補強し、漆で仕上げました。次の修繕まで100 年以上の耐久性を期待しています。
補強する周り50cmから1m程度を仮に囲えば補強できます。モルタル仕上げを剥がしてベルトを巻けば同面に仕上げられます。柱についた窓やドアなどの建具はそのままでOK です。
支持金物、コンセントボックスなどの障害物をかわして巻くことができます。直交壁は、孔を空けてベルトを通したり、アングル・ボルト併用で補強できます。

SRF工法施工実績(PDFファイル:346KB)

SRF工法パンフレット(PDFファイル:1,291KB)

【今後の取り組み】

  1. 複雑な計算を必要とせず、適度の補強厚さを選択し、既存の柱・壁を補強することで使用性と安全性を同時に確保する「耐震被覆」として、SRF工法を位置づける為の研究開発(第2期)を実施します。
  2. 従来工法より、遥かに安価、迅速、確実に補強できることの広報と普及拡大の為、報告会・講習会を開催します。
  3. 震災の調査結果をまとめ、想定を超える地震でも、効果が持続し、使用性と安全性の両方を確保できる工法であることを確認し、公表します。

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復興功績賞


住田型応急木造仮設住宅の建設(住田住宅産業 株式会社)

【取り組み内容】

住田型応急木造仮設住宅の建設

 3月11日、東日本大震災は当町(住田町)と隣接する大船渡市、陸前高田市においても死者・行方不明者合わせて2,260人を超え、インフラの損壊や住宅の流失等々、壊滅的な被害を受けました。

 3月15日、多田町長(住田町長)が来所、『大船渡、高田が壊滅状態だ。すぐ仮設住宅を作ってくれ!』との要請がありました。町長の気迫のこもった言葉から、全責任を負うという覚悟が伝わり、我々の士気を高めたところでありました。

 翌3月16日、図面の手直し等準備に入り、3月18日全社員一丸となり、仮設住宅建設に専念致しました。

 
撮影 太田拓実

 
撮影 太田拓実

すぐに着工出来た訳
  1. 多田町長がもともと有事の際の備えとして、地元木材で仮設住宅が出来ないものかとの構想をもっていた。
  2. 今年1月17日多田町長より木造仮設住宅のプランニングをしてくれとの要請がありました(3月7日には設計図面が出来上がっておりました)。
  3. 災害時の応急仮設住宅は国土交通省の管轄で原則被災地に建設するものですが、外部とは交渉の必要がない住田町が所有する土地に建てる事にした(隣接の仲間がこまっている……)。
設計にあたって

 これまでのプレハブ仮設住宅は阪神大震災や新潟県中越地震等でもさまざまな問題が指摘されておりましたことを教訓として、

  1. 安全、安心、そして健康にも配慮しました(気仙大工の技術と地元木材)。
  2. 住むだけの機能ではなく、寛げる住まいを考え一戸建てとした(プライバシー、孤独死)。
  3. 内壁と外壁の間に断熱材(ポリスチレンフォーム)を挟み込み、壁を一体(パネル化)とした(断熱性・吸湿機能)。
    この壁は神社建築等で使用される柱と柱の間に板を落とし込む『落とし込み板壁工法』を応用致しました。

※気仙大工(けせんだいく)とは気仙地方(大船渡市・陸前高田市・住田町)で神社・仏閣から一般住宅まで手掛けている大工集団。

【今後の取り組み】

復興住宅建設

 仮設住宅建建築中にも、家を流され、家族を失い、路頭に迷って住宅建設の相談に駆け込んで来られた被災者の皆さんがたくさんおられました。一日も早く被災者の皆さん夫々の希望を取り入れ、安全、安心で癒される家づくりにつとめなければと思っています。

 古くから受け継がれてきた『木造在来軸組工法』を基本とし、接着剤や合板を一切使用することなく、地元の良質材と気仙大工の技術を今後とも継承して行きたい。

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優秀賞

耐震の専門家集団 木造耐震ネットワーク知多
(木造耐震ネットワーク知多)

【取り組み内容】

 当会は、2008年の結成以来、愛知県の知多半島の10市町の活動をしている耐震診断員をほとんど結集し、木造住宅の耐震改修にかかる技術力の向上に取り組んでいます。県の方の話によると、この地域では、この効果で木造住宅の耐震改修件数が増加しており、昨年度では年度途中に予算補正を行った市町も複数あったということです。

  当初のころは、耐震診断時に耐震改修を頼まれても自信がないので断る例があったと聞いていますが、全体としての技術力の底上げが図れたと考えています。特に精算法やN値計算など改修費用を安く抑える技術について目的意識的に取り組んできたことが、かなり効果を上げています。また、安価な耐震改修工法についても研修会を開催してきており、耐震改修の推進に役立っています。

 最近は、知多半島の10市町の行政との信頼関係ができてきており、行政からいろいろな形で頼られる組織となってきています。

  1. 日常的学習活動
      愛知県に登録した木造建築の耐震診断員を組織しています。 2008年に結成以降、今年9月までに研修会を16回開催(別紙参照)し、日常的に学習し、会員相互の技術向上に取り組んでいます。 毎回高い参加率で、会員の技術レベルが向上し、安価な改修提案が出来るようになり、耐震改修につながる事例が増えています。
  2. 地域の耐震化を促進する活動
      自治体との連携をはかり、耐震改修相談会を自治体主催で開催し、 相談員として会員を派遣しています。(別紙「木造耐震ネットワーク知多事業実績」参照) 地域のイベントに参加し、市民に耐震化をPRする活動を行っています。
  3. 耐震診断の取り組み
      公民館、社寺等の非住宅および、自治体の無料診断の対象外の 昭和56年以降の住宅の木造建築の耐震診断を行っています。
  4. 耐震化ツールの開発等
      研修会の回数を重ねる中で生まれてきた、耐震診断、改修設計、  相談用のツールを独自に開発しホームページに公開しています。
  5. 地域の建築士としての取組
      当会と愛知建築士会半田支部とは、管轄するエリアが重なっており、主要メンバーも両方に属していることから、地域の防災まちづくりや小中学校への耐震出前講座などにも積極的な役割を果たしています。 特に、小中学校の出前講座に関しては、県で制度化する際に、モデル授業の実施などで大きな役割を果たし貢献しています。 また、小学校区ごとの通学路の安全点検調査も実施しました。(半田市内10小学校区全部でブロック塀、落下の危険のある瓦屋根などを調査し写真、地図などを整備)

木造耐震ネットワーク知多事業実績(PDFファイル:663KB)

  

【今後の取り組み】

  1. 学習活動の継続
      年3〜4回の頻度で研修会を開催します。 内容 ・ 改修技術向上 困難事例、新技術、基礎知識等 ・ 耐震改修事例報告会 ・ 講師を招いての講習会・講演会
  2. 相談活動
      地域自治体に呼びかけ、自治体主催での相談会を開催。 相談員はネットワーク会員から派遣します。
  3. 啓蒙活動
      街づくりなどがテーマのイベントに積極的に参加し、耐震化促進のPRを行います。
  4. 耐震化技術の向上、普及の取り組み
     ホームページの活用、講師派遣などで培った耐震化技術を広げる活動を行います。
     ホームページアドレス   http://www.taishin-chita.net

【特記事項】

 会員数は現在92名。 研修会は全て無料、初回登録費2000円/人だけで会員の負担を 押さえています。有料診断などの事業で運営しています。

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「地盤の大切さ」・・・伝えます―住宅を守る、宅地を守る―
(株式会社 リアス)

【取り組み内容】

開発の経緯

 私たちは中越地震(04年)と中越沖地震(07年)の体験、また「平成16年新潟県中越地震第一次調査団報告(土木学会)」による「〈地震動による被害〉の他に〈地盤の変状による被害〉が多く見られた」との調査結果から、戸建住宅の被害を防ぐためには「地盤が大切」であることを痛感し、住宅の地盤対策として「ランドガード」の開発を08年6月より行い、10年11月に新聞発表を行ったとおり、11年01月より普及活動を開始しました。

大震災を経て

 このように震災前から普及活動をしていましたが、〈来るか来ないか〉、さらに〈いつ起こるか分からない〉地震を前に「地盤の大切さ」を理解してもらうのに苦慮していました。

 しかしながら、先般の東日本大震災では地盤の液状化が多く発生し深刻な社会現象となりました。被害がここまで大きくなってしまった原因は、戸建住宅については今まで地盤に着目してこなかったことが大きく、私たちがいち早く着目した「地盤が大切」という考え方は間違っていませんでした。

 今、改めて「地盤が大切」との思いを強くし、より一層「地盤の大切さ」と対策工法である「ランドガード」の普及活動に取り組んでいます。

「ランドガード」とは

 「ランドガード」は、住宅地盤を深さ4mのソイルセメント連続壁で囲い、内部を拘束して地盤変形を抑制する工法です。

 建物の〈揺れや地盤変形を制する〉工法は、戸建住宅の域を超える費用が掛かります。当社は、〈揺れを許容して地盤変形を小さくする〉発想により、戸建住宅に見合うコストの安い工法の開発を目指し、思いが一致した東京大学生産技術研究所との共同研究としてスタートしました。

 地盤変形の抑制効果は、共同研究の中で、無対策の場合と比較して50%以上の低減、軟弱地盤では60%以上の低減が認められました。

 特に液状化に対しては、「ランドガード」とベタ基礎の組み合わせ効果で液状化による住宅の傾き被害を抑制することができます。

ランドガードの概念図

ランドガードの効果
  • 壁(ランドガード)で地盤を囲み、蓋(ベタ基礎)をします。
  • 壁(ランドガード)で地盤を拘束し、地盤変形を抑制します。
  • 壁(ランドガード)と蓋(ベタ基礎)で水と砂の噴出を防ぎます。
  • 壁(ランドガード)の内と外、8面の抵抗力で住宅を支えます。

 当社において実際に東日本大震災で液状化した千葉県浦安市の噴砂を使用した模型実験では、「ランドガード」を設けた住宅は不同沈下がほとんど発生せず、液状化による住宅の傾き被害を大幅に低減できることを確認しています。

液状化の模型実験−ランドガードあり(左)ランドガードなし(右)

ランドガード説明資料(PDFファイル:660KB)

普及活動への取り組み

 私たちは「地盤の大切さ」と対策工法である「ランドガード」を “全てはエンドユーザーのために” を合言葉に広告媒体、展示会、住宅展示場、工法説明会・プレゼンテーション、さらに論文発表などを通して、各方面に広く工法の普及活動に取り組んでいます。

  1. ランドガードの特別サイトエンドユーザーへの普及活動
      新聞・電車広告への掲載、地元工務店開催のイベントへの参加、住宅展示場での無償施工などを通じた普及。また、インターネットでは、ブログ・ツィッターのほか、ホームページとは別に特設サイトを設置して情報を発信しています。
  2. ハウスメーカー、工務店への普及活動
      ダイレクトメールの送付、工法説明会、プレゼンテーションを行っています。
  3. 建築士への普及活動
    (社)日本建築構造技術者協会、 (社)東京構造設計事務所協会、(社)東京都建築士事務所協会などへの工法説明会、専門誌への工法記事・広告の掲載などを行っています。
  4. 学会などへの普及活動
      土木学会地震工学研究発表会への論文発表(11年11月17〜19日)を予定しています。

ランドガード普及活動の取り組み(PDFファイル:571KB)

【今後の取り組み】

今後の活動予定
  1. 地域コミュニティへの参加
     地元工務店が開催するイベントへの参加を通じた普及、広報活動を継続します。
  2. モデルハウスでの展示
     デモ施工したモデルハウスのオープンに合わせ「ランドガード」の展示を行います。

 住宅地盤への関心は3.11震災以降、確実に高まってきていますが、依然、住宅建築に携わる方々も既存工法からの脱却、また発想の転換がなかなか進まず壁に突き当たっているのが現状です。私たちの思いである「地盤の大切さ」を今回の日本耐震グランプリから発信したいと考えています。

  1. 特記事項
  2. NHKクローズアップ現代(11年5月9日放映)で 「ランドガード」 が戸建住宅の液状化対策工法として紹介されました。
  3. (株)リアスのホームページ  http://www.re-earth0102.co.jp/
  4. 「ランドガード特設サイト」へのアクセス  http://www.re-earth0102.co.jp/landguard

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選考委員特別賞

木造住宅の耐震診断・耐震補強を考える会
(木造住宅の耐震診断・耐震補強を考える会)

【取り組み内容】

 実務者の技術向上を目的とした「耐震診断と耐震補強技術を実習形式」で習得する勉強会で、年間約40時間以上、(財)日本建築防災協会発行の「木造住宅の耐震診断と補強方法(改訂版)」について、内容を詳細にかつ熟知できるようにしています。

  会の設立から2011年11月で5年となり、これまで地元の自治体(堺市)等から優れた技術の団体であることを「現場検査」等で高い評価を得ています。 当団体では、技術的な勉強の他、「コンプライアンス」や「技術者倫理」の勉強も行っており、会員相互のチェックや自分の実例を発表する機会が設けられています。会員相互で指摘やアドバイス等を行い、耐震診断及び耐震補強技術の向上に努めています。

   「木造住宅の耐震診断・耐震補強を考える会」では、耐震診断で最も重要な「調査」について、実際に住んでいる方の了解の上で、実際の住宅の調査実習を行っています。 机上の勉強だけでなく、実際の調査を会員が体験することで、古い木造住宅がどのようにつくられているかを知ってもらうことができ、正しい診断、正確な調査において重要だと考えています。

  過去の木造住宅は、設計者が監理しているものが少なく、たとえ監理されていても「過去の基準」によるもので、設計通りの強度を確保できていない状況を調査実習を通して確認します。

  調査実習は、建築主へのヒアリングに始まり、間取りの把握、柱の位置、壁の種類、基礎の状況を調査します。建物外周部、室内、屋根裏、床下へと調査箇所を移し、特に最後に行う床下調査では、耐力要素である筋かいの接合部や基礎の確認方法を指導しています。

   床下調査では、このように床下に入ることができる場合と入れない場合での実習をしています。また、短時間(床下調査で約1時間程度)でどれだけ詳細に調査できるかが重要であるため、少ない時間で「耐震診断上重要な部分」の調査方法等を、その現場に応じたやり方を指導しています。

 一般的な講習会では、診断法の解説が主で、調査方法を勉強する機会はあまりありません。 経験が少ない建築士が多いので、当会では、現況に触れて状況を判断する方法を習得することで、以後の会員の実務に活かしてもらうことを重要視しています。 そして、既存木造住宅の耐震診断を行うことがいかに複雑難解であることを理解してもらい、その中で依頼者に対しての信頼に応えるべく耐震構造技術を学んでいただきたいと考えます。

 今後も各種の講習会では得られない実務的な情報提供や柔軟な指導法により、現場での調査方法を理解した建築士等の耐震技術者を増やしていきたいと思います。 同じ目的を持つ人達が増えることによって、協力できる関係になれば、その地域での住宅守人として、お互いの調査に協力するといったことが可能になります。調査は1人では効率が悪く、協力体制によってダブルチェックできることは調査の信頼性を高めることにもなります。

「木造住宅の耐震診断・耐震補強を考える会」講習会開催実績(PDFファイル:153KB)

【今後の取り組み】

 現在のところは「近畿地域」での取り組みですが、今後は西日本地域で、こういった取り組みに賛同していただける建築士等の団体にアピールしていきたいと思います。

 地域に応じた耐震補強を提案し、相互の技術向上に努めたいと思います。 特に、西日本の太平洋側の地域や都市部での密集木造地帯を有している府県に対して、活動を広げたいと考えています。

【特記事項】

 「木造住宅の耐震診断・耐震補強を考える会」の耐震技術の指導者である田原賢は、(財)日本建築防災協会発行の「木造住宅の耐震診断と補強方法(改訂版)」の原案作成委員として、このテキストの作成に関わった人物で、内容を熟知しており、現場での実績が多数あるため、実務に役立つ技術を適切に教えています。

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被災土蔵の耐震性を改善した4つの修復工法の開発と研修会の開催
(NPO法人 輪島土蔵文化研究会)

【取り組み内容】

■活動の背景と目的

 2007年3月25日に発生した能登半島地震の後、被害が大きいにも関わらず震災復興の公的な支援対象から外されている土蔵の修復支援活動が始まり、以下の4つのプロジェクトを展開してきた。

  1. 土蔵の被災状況と原因等の調査分析
  2. 耐震性に優れた土壁改修工法の開発と事例の提示
  3. 土蔵修復技術の伝承による左官職人の育成
  4. 修復した土蔵によるまちづくり
■土蔵の被災状況の調査と原因分析

  我が国を代表する左官職人・久住章氏とその職人集団の支援を得て39軒74棟の土蔵を調査し、図面とカルテに取りまとめた。今回土蔵の被害が大きかった理由は、以下の点が指摘された。

  土の粘性が低く、乾燥する前に塗り重ねられたためか縄が蒸れて本来の力が無くなっている、間渡し竹が入ってない、樽巻きがないなど縄の量がかなり少ない、敷地の地下水位が高く排水処理が不十分で湿気が多くかつ水害にも遭っている。

■耐震性に優れた土壁の4つの改修工法の事例提示

  土蔵所有者に対して、取り壊さずとも修復して活用するための4つの異なる工法を久住章氏が考案し、それぞれ修復し事例を提示した。

【伝統的な土壁に近い工法】(O邸土蔵)
輪島の土壁の弱点(問題点)を改善して伝統的な土壁とするため、丸竹を充分な量の縄で編んだ竹小舞と何度も土を塗り重ねた構造。
【壁厚を薄く仕上げる工法】(D邸土蔵)
周囲を建物で取り囲まれており乾燥しにくいため、割竹を密に編み込んで竹小舞だけで強度を持たせる構造とした。
【崩壊した部分の修復工法】(F邸土蔵)
以前の水害の影響で床上1メートルまでが崩落した部分に、日干し煉瓦を積み上げて上部の壁を受ける構造とした。
【簡便に壁を積み上げる工法】(K邸土蔵)
少ない回数で壁厚を持たせるために、版築の技術を取り入れた塗り壁工法。


伝統的な土壁に近い工法 07年7月〜08年10月【O邸土蔵】


壁土の材料を作り出す 土・竹釘・藁すさ 07年7月

■土蔵修復技術研修会の開催

  土蔵の修復を手掛けた経験のある左官職人は高齢廃業しており、中堅若手ではほとんどいないことが判明したため、本事業はワークショップ形式で運営し、指導者(左官親方)が若手職人や見習いに対して技術を指導し、一般ボランティアがその手元や材料運搬として支援してきた。

  竹小舞の編み方、荒壁、大直し、むら直し、中塗り、樽巻き、漆喰仕上げまで全工程を、土蔵そのもので技術指導する研修会は我が国で初の試みである。

■修復した土蔵によるまちづくり

 遊休化していて取り壊される運命にあった土蔵3棟を土蔵研が定期借用し、以下のパブリックスペースとして整備活用している。

【左官技術研修場】(T邸土蔵)
【セミナーハウス】(N邸土蔵)
【ライブラリーカフェ】(F邸土蔵)

  それ以外にも修復を支援する予定の土蔵2棟があり、修復された土蔵群を回遊する新たなコミュニティを創出することを目指している。

資料「被災土蔵から展開する4つの耐震プロジェクト」(PDFファイル:834KB)

【今後の取り組み】

■被災地復興の技術研究+まちづくりセミナーの開催

 来春完成予定のセミナーハウス(定期借用した土蔵を改修)において、左官職人や土壁研究者を対象とした技術研究シンポジウムを開催する。また、まちづくり専門家や大学生、被災地支援NPOを対象として、まちづくり組織と運営プログラム、活動資金確保などについて話し合うまちづくりセミナーも開催する予定である。

 このようなセミナーを通じて、本事業で得た経験知を、左官技術の伝承と職人の育成、全国の復興支援まちづくりに繋げていく。

【特記事項】

  • 技術研修会参加職人
      北陸3県を中心として全国から約90名の左官職人が参加。
  • ワークショップ参加者
      一般ボランティアは450名を超える。
  • 独自のシステムによる活動資金の確保
      「土蔵へどうぞ」という寄付システムを構築、全国約300名から志が寄せられ活動資金に充てさせていただいている。
  • 情報発信
     活動紹介ブログ http://wajimareno.exblog.jp/
     ホームページ  http://wajimadozo.sakura.ne.jp/

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※「第5回日本耐震グランプリ」の応募要領や選考方法などは「第5回日本耐震グランプリ参加者募集!」をご覧ください。


「第5回日本耐震グランプリ」表彰式

 2011年11月8日(火曜日)に、「第5回日本耐震グランプリ −まちを守る−(第13回都市防災推進セミナー)」で行います。

 このセミナーでは、表彰式のほかに、有識者によるシンポジウムを実施します。

  詳しくは、「第5回日本耐震グランプリ −まちを守る−(第13回都市防災推進セミナー)」をご覧ください。

応募先・問い合わせ先

 東京いのちのポータルサイト事務局(担当:寿乃田、鍵屋、小田)
 お問い合わせ:耐震グランプリに関するお問い合わせフォーム
 所在地:〒160-0022 東京都新宿区新宿6-7-1エルプリメント新宿209
 電話番号:080-5544-1500 / ファクス:03-5913-7251

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